春風、漫ろに舞う

姫女苑の狂愛

朝、部屋に入ってきた太陽光で目が覚めた。
時間を見れば、5時間くらいしか眠れていない。


玄関を見て、藤雅の靴がないことにまた悲しい気持ちになる。
泣きそうになりながら、リビングに行くとテーブルに置き忘れてたスマホの手を伸ばした。
何も連絡がきてないことに落胆して、放置してたんだっけ。



「…なにも連絡なしか。」



見てもなにも来ていなかった。
わたしが送ったメッセージに、既読はついていたけど。
既読無視…ってやつかな。


こんなこと、初めて。
なにかあったんじゃ…と思ったけど、昨日十葵が着替えを取りにきたっけ。
朝帰りなのは、言わずもがなってところ。


心配するだけ、無意味だ。
他の女のところに泊まっている男なんて、心配する必要すらない。



「…出てけ、って言われるのかなあ…。」



どうしよう、新しい女連れてきたりしたら。
今のうちに、荷物まとめた方がいい?


なんて、色々考えていたら。
ガチャンと玄関のドアの開く音がした。



「藤雅…?」


「おはようございます、芽来さん。」


「蒼樹…。」



なんだ、また違った。
なにしてんだろう、藤雅は。
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