春風、漫ろに舞う
「それは、何かきっかけがあるのか…?
行動に移すきっかけが。」


「…分からない。
嫌なことがあっても、死にたいってならない時もあるし。
嬉しいことがあって、死にたいってなる時もあるから。」


「……。」



なんて言ったらいいんだろう。
藤雅の悲しそうな顔、見たくないのに。
わたしがその顔にさせちゃってる。


正しい言い方が分からなくて、相手を気遣う言い方が出来るほど頭が回らないけど。
ちゃんと、言いたい。



「今日…?昨日か。
昨日は特にそうだった気がする。
ごめんね、記憶が曖昧なの。
でもすごく楽しかったから、楽しい気持ちのままで死にたかったのかも。」


「……独りで、死ぬな。」


「え…?」


「お前が死ぬ時は、俺と一緒だ。
独りで逝くな。」


「……一緒に…?」


「ああ。
勝手に死んでくれるなよ。」



わたしの目を見て言い放つから。

その瞳が澄んでいて綺麗で、わたしを否定しないで居てくれたことが嬉しくて。

藤雅の腕の中で。
わたしは、静かに涙を零した。


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