春風、漫ろに舞う

貝母百合

「お綺麗ですよ、若姐さん。」


「え、あ…すみません…。」



週末。
無事、熱も下がり体調も戻ったわたしは、藤雅に連れられて一条邸に来ていた。

なんでも、今日は大事な会合があるそうで。
何をするのかもよく分からないけど、連れられるがままに来てしまったらこの有様。


素敵なお着物を着せられて、それに合うように髪も纏められていた。
着物もこれも、高いんだろうなあ…。



「お化粧はいかがいたしますか?」


「あ、大丈夫です。
自分でやりますから…。」



千歳さんによると、着物の着付け等々をしてくれたのは今日会合に参加する組の女性達だそうで。
わたしなんかにも、藤雅の彼女だからと敬意を表してくれた。


ありがとうございます、とお礼を言えば。
気品のある所作で静かに部屋を出ていった。



「…着物にこの髪色は合わなかったかな。」



まさか着物を着させてもらえるなんて思ってもいなかったから。
持ってきたやつと、さっきの人達が置いていったメイク用品を借りて少しずつ足していく。


今の顔じゃ、着物映えしない。
顔が薄すぎて、似合わない。



「…着物なんて、七五三ぶりなんじゃない…?」



夏祭りで浴衣とか、ライブ衣装で着物のアレンジはよく着ていたけど。
ちゃんとした着物なんて、着る機会そうそうない。


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