春風、漫ろに舞う
雪月花

鳳仙花

あれから、特に変わりなく。
わたしは普通の高校生として、藤雅とのお付き合いを続けていた。
千歳さんと、お母さんと3人でお出かけした日もあったよ。


3人で、ご飯を食べて映画を見に行ったの。
お母さんと千歳さん、映画の趣味が似てる事から仲良くなって最後は2人で楽しそうにしてたりして。
家族ぐるみで仲良くできるなんて、幸せ。



「うー…寒い…。」



季節は2月。
マフラーに顔を埋めながら。
来年の今頃は受験かあ…と、街中の受験ムードを横目に本屋へ向かう。


必勝!なんて書かれた看板や、勝つ!と験担ぎになりそうなパッケージのチョコレート。
本屋に入れば、それは顕著に出てきて。
興味も無いのに、大学の問題集をぱらぱらと立ち読み。



「…わけわかんない。」



やめたやめた。
大学なんて行く気ないし、見るだけ無駄無駄。

頭のいい藤雅ならまだしも、わたしには無理。
時間の無駄になるだけ。


わたしが探してるのは、音楽雑誌。
少し前に、煌月としてインタビューを受けた時のやつ。
メジャーデビュー、とまではいかないけれど音楽配信サービスで配信も始まったしCD販売も始めた。

インディーズ雑誌だけど、載せてもらえて嬉しいし裏表紙にもしてもらったから記念に1冊だけ。



「……これ…。」



お目当ての雑誌の隣にあったのに、不意に手を伸ばす。


有名な音楽雑誌で、今話題のオーケストラとか指揮者とかを取り上げてるやつだ。
名前だけ、聞いた事ある。
クラッシック系だから、内容はあまり分からないけど。

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