モフぴよ精霊と領地でのんびり暮らすので、嫌われ公爵令嬢は冷徹王太子と婚約破棄したい
 最近では料理長が弁当用に使いやすい食材をキープするなど、協力体制が敷かれている。一般的な貴族令嬢は料理をしないものなのに、公爵家の人々は理解があり助かっている。恵まれた環境に感謝でいっぱいだ。

 ほとんどの生徒は食堂を利用するので、この裏庭には人気(ひとけ)がない。

 今のベアトリスが学院内でほっとできる貴重な場所だ。

「ぴいぴい」

 最近、弁当を広げると小鳥精霊のピピが自分も食べたいとでも言うように、羽をパタパタさせながら鳴く。ちなみにピピという名前は、鳴き声からベアトリスがつけたものだ。

 守護精霊は普段は異界におり召喚主が呼び出さない限り姿を見せないものだが、ピピはなぜか異界に戻らず常にベアトリスのそばにいる。制服の内ポケットがピピの指定席になっているが、ときどきベアトリスの周りをパタパタ飛んでいたり、夜は一緒のベッドで眠ったり。機嫌がいいと綺麗な声でさえずってくれる。

 制御できていないからだと教師には注意をされるけれど、かわいいピピがそばにいるから寂しさが紛れるし、心が癒されている。

「ピピもおなかが空いたのね」

 精霊は人のように食べ物を必要としないそうだが、ピピはデザートまで食べたがる。かなり規格外の精霊みたいだ。

 小さなお皿に細かくちぎったサンドイッチと、野菜をのせてあげる。するとピピはうれしそうについばみ始めた。
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