モフぴよ精霊と領地でのんびり暮らすので、嫌われ公爵令嬢は冷徹王太子と婚約破棄したい
 女神のように美しい彼女が自分の婚約者になる喜びに舞い上がり、自身の幸運に感謝した。

 しかしすぐにそれは間違いだったと気がついた。

 ベアトリスは驚くくらい中身に問題がある令嬢だったのだ。

 貪欲で傲慢。そして怠惰。常になにかを欲しているが、手に入れるための努力をしようとしない。

 少しでも不満があるとすぐに癇癪を起こして暴れて、平気で周囲に迷惑をかける。

 婚約者は自分のものだと思っているのか、ユリアンが思い通りの反応をしないと激高する。嫉妬深く、ユリアンがただ会話をしただけの女性に対して攻撃をする苛烈な性格。

 初対面で抱いた好感など瞬く間に消え去り、ユリアンはベアトリスに対して嫌悪感しか持てなくなっていた。すぐにでも婚約解消を言い渡したいほどに。

 しかしそう簡単に事は運ばない。ユリアンが王位につくためには、不本意ながらベアトリスとの婚約が必要だからだ。

 その理由はユリアンの生まれにある。ユリアンの母である王妃は、隣国サラエナ国の王女だった人だ。

 友好目的でダールベルク王国に嫁いできたが、数年前にサラエナ国が突如同盟の破棄を突きつけてきて、一時は開戦かともささやかれていた。

 結局国境での小競り合いで終わったが関係改善とまではいかず、ダールベルク王国国民のサラエナ国への感情はよくない。
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