魔法のいらないシンデレラ
企画広報課の部屋は、朝から皆ソワソワとしていた。

デートや合コンの約束で、今日は誰もが浮き足立っている。

他の課と違い特に今日忙しくなる訳ではないので、青木も皆に、ちゃんと定時で上がれよと伝えていた。

「ね、瑠璃ちゃんって今夜予定あるの?」

隣の席の奈々がこっそり聞いてくる。

「何もないよー、いつもと同じ」
「そっか」

そう言って奈々は、ちょっとはにかみながら、少女のような笑顔でうつむく。

(ん?もしや…)

「奈々ちゃん、今夜はデートなの?」
「えっ!やだっ!瑠璃ちゃんたら」
「しーっ。声が大きいよ」
「あ、ご、ごめん」
「うふふ、そうかあ。楽しんできてね!奈々ちゃん」
「う、うん。でも初めてのデートで、緊張してて…」
「え、そうなの?」
「うん。先週告白されたばかりで…」

そう言って奈々は、ちらっと部屋の前方に目をやった。

ん?と思いつつその視線の先を追うと…

「えっ!奈々ちゃん、まさかっ!」

今度は瑠璃が、しーっと言われ、慌てて口を押さえる。

「ご、ごめん。でも、奈々ちゃん、もしや…」

青木課長と?と瑠璃がささやくと、顔を真っ赤にして奈々は頷いた。
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