魔法のいらないシンデレラ
朝からきれいな青空が広がっていた。

花嫁の控え室で杉下は、
いやーん、もう、腕が鳴りまくっちゃう
と笑いながら、瑠璃にとびきりすてきなメイクを施してくれた。

髪もきれいにアップでまとめ、仕上げに煌めくティアラを載せると、杉下はうっとりと両手で頬を押さえる。

「すてき過ぎる…なんてお美しいの」

瑠璃は微笑んでお礼を言う。

そんな控え室でのひとコマも、古谷は何枚も撮影してくれた。

「いやーもう、シャッター押す指が止まりませんよ」
「あら、これからお式も披露宴もあるのに、枚数大丈夫ですか?」
「大丈夫!予備のカメラも2台持ってきましたから!」

杉下と古谷のやり取りに、瑠璃も思わず笑顔になる。

その時、ドアがノックされた。

「はーい、どうぞー」

杉下が返事をすると、失礼致しますと言って、早瀬が入って来た。

「早瀬さん」

瑠璃が声をかけると、ふと顔を上げた早瀬が驚いて目を見開く。

怪訝そうな瑠璃と早瀬を見比べ、杉下が頷く。

「そりゃそうなりますよねー。こんなおきれいな花嫁様、初めてですもの」

早瀬は、必死でいつもの顔を作り、瑠璃に声をかける。

「あ、そ、その、そろそろお時間ですので、チャペルの方へ」
「はい。承知しました」
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