魔法のいらないシンデレラ
帰りも和樹が車で瑠璃を送り届ける。

行きとは違って、色々と会話をしているうちに、あっという間に到着した。

車を停めた和樹が先に降り、助手席のドアを開けて瑠璃に手を貸す。

「じゃあ、またな」
「うん、ありがとう!」

瑠璃が笑顔でお礼を言うと、和樹は一瞬動きを止めた。

そして急いで車に戻ると、一気に走り出す。

バックミラーで瑠璃の姿が見えなくなったことを確認すると、はあーと脱力した。

(なんなんだよ、もう。あの無邪気な笑顔)

皮肉なもので、別れた途端、瑠璃は自分に優しく笑いかけてくれる。

(瑠璃のことは諦めるって心に決めたのに。出来るのか?俺)

山にこもって修行しようかと、本気で考え始める和樹だった。
< 45 / 232 >

この作品をシェア

pagetop