魔法のいらないシンデレラ
瑠璃がスマートフォンでバラの写真を撮っていると、古谷がアドバイスしてくれる。

「この花なら、真上から撮った方がいいかな」

瑠璃の手に自分の手を添え、角度や距離を微調整すると、うん、ここ!と合図する。

瑠璃はすかさず画面をタップした。

「うわー、きれい!花びらの1枚1枚まで生命が宿っている感じ」
「ああ、本当に。みずみずしくていいですね。スマホでもこんなによく撮れるのか」

二人で小さな画面に顔を寄せ合っていると、ふと背後に人の気配を感じた。

「あ、総支配人!」

瑠璃と古谷は、急いで通路の端により、お疲れ様でございますと頭を下げる。

「ああ、いや…お疲れ様」

軽く手を挙げると、一生は二人の前を通り過ぎた。
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