逃すもんか
「いや〜あの後そんな急展開になったなんて…
平岡さん。本当におめでとうございます。
少し落ち着いたら、婚約お祝いをしましょうよ。」

「史弥、落ち着く暇なんてないかも…」

「え? どういう…」

「北野さんのお父さんがウチの親父と電話したんだよ。
ウチは何も、知らない訳で〜
その後ウチの親父とお袋が北野さんちにやって来てさ〜
プロポーズも婚約指輪も渡してないのに…
来年の春に結婚する事になったんだ〜」

「え〜春に?…」

「うん。親たちが盛り上がってさ〜。
勝手にラグビー繋がりで北野さんのお父さんの同窓生が結婚式場してて…
ウチの親父も知ってる後輩で…
4月20日の大安に決まったんだ。

3月は決算期だし、4月は新入社員が入って忙しいからなぁとか言っちゃってさ〜」

「北野さんは?北野さんは納得した?
大丈夫?」

「うん。ウチのお袋と北野さんのお母さんとケラケラ笑ってたよ。
俺が心配して、北野さんの希望を言わないとダメだよと言ったらさ、『お父さん達に丸投げした方がすんなりいきそうだよ。ウエディングドレスだけは私の着たいものになればそれで良いの』って言うし〜」

「結婚式よりも平岡さんの奥さんになる方が重要って事か…
平岡さん、北野さんって本当に良い人で良かったね。
でも、お祝いはさせてよ〜」

「北野さんが…俺の奥さんになる方が重要かぁ…
奥さん。カミさん。ハニー。」

「ちょっと、平岡さん。結婚式には呼んでよね!」

「もちろん、大切な同期の史弥は絶対に招待する!」
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