逃すもんか

「じゃあ、これで史弥は夢も叶ったしあとひとつだけ除けばバッチリだな〜」

「はい。昨日、本店でゆかりへの婚約指輪も買ったし、空港から速攻で帰って急いでアパートへ行ったのにゆかりはいないんですよ〜
もしかしたら、1日間違えてんのかなぁ〜
電話しても繋がらないし」

***
ゆかりは史弥が婚約指輪を買ったと聞いて、美桜の顔を見た。
美桜はニコニコして大きく頷いた。
また、ゆかりは信じられなくて泣き出した。

美桜が少し襖を開けた。
***

それに気がついた柊一が
「史弥!じゃあここでプロポーズしろよ!
俺と美桜が証人だ!」

「は? ココで? え?」

史弥の背中側の襖が勢いよく開いた。

ビックリして立ち上がり、振り返った史弥。
「ゆかり!! 
どうして平岡さんちにいるんだよ〜
ゆかりに何かあったかもしれないと思って心配したんだぞ!」

「ゴメンなさい。」とゆかりは史弥に抱きついた。

「どうした?何で泣いてんの?」

「ゆかりちゃん、史弥はね〜夢も叶ってないのに軽々しく結婚の話しをゆかりちゃんにできなかったんだよ。
な、史弥。」

「まぁ。オレだってカッコつけてプロポーズしたかったし〜」

「うわ〜ん。史弥さんは単身でフランスへ行くってずぅーと思ってたの私。」

「え?オレ、一度も1人でフランスへ行くなんて言ってないよ?……」

「史弥、どうやらゆかりちゃんはさ〜
ずっと史弥は単身でフランス行くからお前が採用合格したら捨てられると思ってたみたいだよ?」

「本当にそんな事思って付き合ってたのか?ゆかりは」

コクンと頷くゆかり

「バカだなぁ〜オレが大切な【夢】も、そして愛してる【ゆかり】も逃すわけないだろ!」

「うん。ありがとう」と目をこすって笑顔で史弥を見る。

史弥は、上着のポケットから婚約指輪のケースをパカっと開けて片膝をつき

「中島 ゆかりさん!オレと結婚して下さい!」

「本当にホントにずっと一緒にいていいの?」

「ああ。オレはゆかりじゃあないとダメなんだよ。
お願いします! オレのお嫁さんになって下さい。」

「ゔ… は…い。一生史弥さんの応援隊長になりますぅ…グスッ。」とまたポロポロ涙を流すゆかり。

史弥は立ち上がり、ケースから婚約指輪をゆかりの薬指に嵌めた。

柊一と美桜が
「「おめでとう!!」」と盛大に拍手してくれた。

史弥とゆかりは2人にお辞儀した。
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