放課後の眠り姫
莉生にジッと見つめられ、珊瑚の胸がキュンと鳴る。だが、このキュンは恋をしているキュンではなく、小動物などに癒された時のキュンだ。

珊瑚と莉生は、この学校ではかなり有名人である。生まれてくる性別を間違えた二人として……。

珊瑚は、可愛らしい名前をつけてもらったものの、身長は中学二年生にして百六十四センチもあり、華奢ではなく筋肉質な体で、顔も中性的だ。髪は祖母に「せっかく女の子に生まれたんだから!」と言われて伸ばしているものの、女の子として扱ってもらえることはほとんどない。

小さい頃から、女の子のお人形遊びやおままごとには誘われず、男の子たちと鬼ごっこやサッカーをすることが多かった。可愛いものやスイーツが好きなのだが、「好きじゃなさそう」とよく他人から言われ、その度に落ち込んだ。

中学に入ってから密かに憧れていた演劇部に入ったものの、演じる役はいつも男性の役だ。「ロミオとジュリエット」をすればロミオ役を、「シンデレラ」や「白雪姫」をすれば王子様役を演じるように言われる。
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