霊感御曹司と結婚する方法

水面下にあるもの ー糾司視点ー

 俺が入院して早々に、病室に刑事が訪ねてきた。

 俺と蒼子の関係を聞かれた。正直に今の何でもない関係のことを答えておいた。

「恋人未満……ね」

 そして、義姉の一歌のことや、松島沙耶との関係を聞かれた。義姉を苦手にしていることや、俺の婚約者とされている松島沙耶とは、今まで接触がないことを言った。

 刑事から、沙耶は一歌の同性の愛人であったことを聞かされ、とても驚いた。

「兄はそのことを知っていますか?」

「専務からも事情は聞きましたから、その際にお伝えしました」

「義姉はどこから蒼子の存在を知ったんでしょう?」

「それは、専務がおっしゃっていましたよ。あなたの会社のメンバーに、元社員の女性が新しく入ったことを言ってしまったと」

 この間、義姉に呼び出されたレストランの一件で、俺の態度に腹を立てた義姉は、兄に詰め寄ったのだろう。俺に女がいるんじゃないかと。それで、兄は思い当たることとして答えたのだろう。

 刑事はさらに続けた。

「一歌がそれを聞いて、すぐにあなたの恋人関係に結びついたのかというのは、女の感というやつじゃないですかね。彼女、実は密かに、あなたに好意を寄せていたんじゃないですかね?」

「はい?」

「専務のご自宅から、彼女の部屋からあなたの写真がたくさん出てきました。もちろん、スマホのデータにも。学生服姿のものもありましたよ」

 耳を疑う内容だ。

「蒼子さんを狙った本当のところは、あなたの恋人関係を知って、居ても立っても居られなかったんじゃないですかね」

 刑事は自分の妄想だと前置きして、さらに言った。

「自分の眼鏡にかなった女性を、婚約者としてあなたにあてがい、自分の愛人でもある彼女を通じて、間接的にあなたと結ばれる幻想を得ようとしていたとかね……」

「……やめてもらえますか?」

 一歌が、俺の縁談に執着する理由の一つとしては納得はするが、俺にとっては実におぞましい。

 彼女にとっての俺の縁談は、会社内部の情報を得やすくするための人脈づくりの一貫だと理解していた。
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