一夜限りのお相手が溺愛先生へと変貌しました




すると会話をしていた二人のところに、繭が指導していた後輩社員が三人、ゾロゾロとやってきた。



「里中さん、元気な赤ちゃん産んでください!」
「俺、里中さん無しで業務進められる自信ないんで早く戻ってきてくださいよ〜」
「これだから男は……産後も大変でしょうから、ゆっくり静養しながら育児して下さいね」



そう言葉をかけてくると、その内の一人が可愛らしいスタンダードサイズの花束を繭に差し出してくる。


一時期は、新入社員の後輩達から冷たい指導を繭にされたと苦情がきていたが。

後輩達が指導の大変さを理解したのか、はたまた繭が公私共に穏やかでいられるようになったお陰なのか。

今となっては、仕事が早く的確なアドバイスを送ってくれる、部署で一番頼れる先輩として認識されるようになった。



「みんな……これから年末迎えて忙しくなる時に産休入っちゃって、ご迷惑おかけしてすみません」
「やだなぁ里中さん、そんな事全然思ってないですから!」



お喋り好きな後輩の女性社員が、片手を左右に振りながら笑顔で答えると、真面目な顔つきで補足する。



「むしろ今まで里中さんに頼りっぱなしだったので、こちらこそ今まですみませんでした……」
「えっ、そんな……」
「里中さんが帰ってきた時の私達新人の成長、楽しみにしていてくださいね!」
「……ふふ、ありがとう。楽しみにしてる」



頼もしい後輩に向けて笑みをこぼした珍しい繭の姿に、やはりここ数ヶ月で雰囲気が変わったと誰もが思った。


きっと妊娠がわかって母の自覚を持ったことももちろんなのだが、何よりあれほど仕事人間で残業の鬼だった繭をここまで変えたのは。


最近、正式に夫となった天川という名の男性なんだと考えると、勝手に尊敬の心が沸いてくる。



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