一夜限りのお相手が溺愛先生へと変貌しました




肩に置かれた凛の手を払い退けて、繭を追いかけようとした椿だったが、先回りした凛がドアの前に立ちはだかる。



「まだ私の事"ただの幼馴染"って思ってるの!?」
「それ以外に何があるんだよ」
「昔から言ってるじゃん!私は椿が好きだって!」



応接室のドアから椿が逃げないよう、両腕を広げて気持ちを訴えた凛。

しかしその言葉を何度も聞かされその度に断っている椿にとっては、不毛なやり取りに毎回嫌気がさしていた。



「凛、何度も言わせるな」
「私と結婚して」
「嫌だ」
「一年離れてわかった、やっぱり椿が一番好きなの!」



椿に会って結婚を迫るために日本に帰ってきた凛は、仕事よりも椿を納得させ首を縦に振らせる方が高難易度。

それなのに一年振りの日本で出会ったのは、椿の子供を身ごもったらしい平凡な女と、こんなに想っていても全く心を手に入れられない椿。

だから自分を差し置いて、椿も他の女も幸せになるなんて許せなかった。



「凛、俺はお前を異性として考えた事は一度もないって言ってるだろ」
「は……繭って女はそんなに良かったの……?」
「ああ」



椿の意志は固く、心はもう揺らぐ事がないとわかった凛。

しかし椿が揺らがなくても、先程の様子を見る限り繭には効果抜群だったので。

まだまだ結末はわからないと読み、凛は話し始める。



「でもあの女、私と椿が婚約してるって言ったらあっさり手を引いたのよ」
「はあ?凛お前……!」
「椿だって、子供が出来ていなければ結婚なんて考えなかったくせに!」



椿は一度寝た女性とは二度と会わない主義で、今まで例外なんて一切なかったのに。

思い当たる事は一つ、子供が出来たからとしか考えられなかった。



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