なぜか推しが追ってくる。
プロローグ




もう無理かもしれない。


映画は無事クランクアップしたものの、湧いてくるのは安堵ばかりで喜びは皆無だった。



事務所からの期待は重い。

今回は乗り切れたが、次回は?


主演女優のものと比べると数段見劣りする花束を受け取りながら、込み上げてくる不安と吐き気を必死に噛み殺す。



……ああ、どうしてもあの子に会いたい。

かつて、芽の出なかった自分に光を見せてくれた女の子。

あの頃は、彼女の目に止まりたいがために一生懸命だった。



──彼女が忽然と姿を消してから数年。

ようやくだ。ようやく手がかりを掴むことができた。



もう一度あの子に光を見せてもらわなければ、きっと自分は本当にだめになってしまう。


もしこの手であの子に触れることができたら、今度こそ絶対に離したりしない。




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