なぜか推しが追ってくる。
真緒はわたしの剣幕に圧されてうなずいているけど、「何言ってんだこいつ」という顔をしている。ごめんわたしもちょっと何言ってるかわかんなくなってきた。
……それにそもそも、推しに認知されたくないという感覚は、共感する人とそうでない人がいるのだ。真緒はあまり共感しないタイプなのだろう。
「決めた。恭くんがわたしと同じ世界に来てしまったという事実はもう変えようがないみたいだから、せめて自分で距離をとる努力をする。全力で恭くんから逃げる!」
わたしは今度はそんな決心を固め、ギュっと拳を握った。
仲良くならないよう、可能な限り距離をとれば、わたしの中で『別世界の住人恭くん』のままでいてくれるはず。