なぜか推しが追ってくる。




「おーい横着するなー。文字と文字の間空きすぎだぞ」


「ふっ、小さな字でぎっしり詰めたら先生の老眼じゃあ見えないだろうからって、わたしなりの気遣い……うわ、先生! チョークの粉付いた手で雑誌に触らないでっ!」




高速で書いたせいで最後の方はイタリック体のようになった反省文を先生に押し付け、ひったくるように雑誌を奪い取った。


流行りのファッションやコスメ情報の載った、今後たぶん一度も見ないであろうページは完全無視して、真ん中のあたりのページを開く。



【特集 天羽恭】



スタイリッシュな手書きフォントでドーンと書かれたその文字。そして爽やかに微笑む国宝級イケメンの写真たち。わたしのお気に入りは花束持って笑ってるやつ。


この雑誌では数か月に渡って注目の若手俳優特集が組まれており、今号でやっとこさわたしの推しこと(きょう)くんの番が回ってきたのだ。




「やーっと取り戻したよ恭く~ん! お帰り!」




ああなんだろう。輝いてる。このページだけ質の良い紙とインク使って印刷してんじゃない?




「……武藤、反省文の意味わかってるか? あとな、おれはまだ四十代になったばっかだ。老眼じゃない」




先生はそう大きくため息をつくものの、マニュアル通りに仕事をしたからとばかりに立ち上がり、教室から出て行く。




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