酩酊メロウ
初めてタバコを吸ったのは15の冬だった。
あの時は人が死んだ。ガキの頃から世話になってる、気前のいい本家のおっさんが抗争に巻き込まれて帰らぬ人となった。


おっさんの遺品のマイセン──今でいうところのメビウスが、俺にとっての初めて覚えたタバコの味だった。


それから10年はかなりのヘビースモーカーだった。
しかし、この家に越してきてからはほとんど吸っていない。


なぜなら流星と星奈が頻繁に泊まりに来るから。
さすがに子どもたちの前で吸うのは俺の良心が傷んで、一念発起で禁煙しようと思ったら割といけた。


まあ、今日はイライラが募って久々に吸っちまったわけだか。



「ただいまぁ」



3本目に手を伸ばして火をつけた時、澪の声が玄関から聞こえた。
あれ、今日夕方まで講義って言ってなかったか?



「タバコ臭っ……あれ、憂雅さんの靴がある!」

「……やべ」



ドア開けっ放しどころか、換気扇つけ忘れてた。これはさすがに怒られると思い、キッチンに向かい、換気扇のスイッチを押す。
そしてあたかも最初から換気扇の下で吸ってましたという顔で「おかえり」とリビングに入ってきた澪を出迎えた。



「憂雅さんがタバコ吸ってるところ初めて見ました!」



タバコ臭いって呟いてたから嫌な顔されると思ったのに、俺の顔を見るなり満面の笑みで目を輝かせる。

なんで興奮してんだよ。かわいいなおい。
つーかすげえな、澪の顔見たら苛立ちが一瞬にして消えた。
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