貴方と私は秘密の✕✕ 〜地味系女子はハイスペ王子に夜の指南を所望される〜
足元に横倒しになった紙袋には仙台銘菓「萩と月」とのレイアウト。
なるほど宮城県からの出張帰りだったのね。
彼女が給湯室にいるって話を聞きつけて、わざわざお土産を渡しに会いにきたってところだろうか。

萩と月って美味しいよねー。
ドーム型のスポンジの中の卵色のクリームが堪んないんだよねー。
冷やして食べても美味しいんだよねー。
チョコ味も実はあるんだよねー……

ちらりと覗く化粧箱に目がとまれば、残業前の中途半端に空いたお腹がグゥと鳴り。床に転がる銘菓に思いを馳せながら、ちらりと神山透の様子を窺い見れば、顔色の悪いイケメンは震える手で口元を押さえたきり、どこか一点を見つめ立ち尽くしている。


……この顔、このリアクションは、多分、給湯室の彼女達の話、聞こえちゃってる、よ、ね……。


ハイスペック(但し夜以外)な彼氏が扉の外にいると気が付かない彼女たちのエゲツない会話は続いていく。
そしてそれを耳にする神山透は顔色を更に更に悪くする。

そしてついには顔全体を手で覆ってうなだれると、

「山本さん、これから飲みに行きませんか?」


なぜか私を飲みに誘ったのだった。

……はぁ?!
私ぃ???

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