タイムスリップ・キス
すぐに制服に着替えた。
スウェットより、制服のがいいかと思って。

山田を起こさないようにこっそり抜け出し、コートだけは借りて真夜中のアパートから飛び出した。

昼間歩いてみてなんとなくわかっていた。
私の頭の中の地図で十分どうにかなるぐらい知ってる場所だった。

それは至極当然のことで、別の世界に飛んだわけじゃないんだから。

公園だって学校だってある、そう思ったら迷うことはない。

帰っていい場所じゃないかもしれないけど、帰る場所はきっとそこしかないんだ。


会いに行こう、自分に。


まずは自分に会いに行かなくちゃ。


自分に会ってどうするのかまだ決めてないけど、自分のことなんだから5年後の私に、この世界の私に…


会いに行こう!

そしたら何かわかるかもしれないし!


ここからなら走っていける、私の家に。


そう思ったらいてもたってもいられなくて、夜中だということも忘れて走り出した。

せかされる心に必死に足を上げる。

ぜぇはぁと息を切らしながら、いつもの道を駆け抜ける。

大丈夫、変わってない。

この道、知ってる。

そのまんまだ。

あと少し、あの角を曲がったらその隣が私の家。

お父さんとお母さんと一緒に住む、私の家があるー…








はずだった。
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