タイムスリップ・キス
「そーいえばなっちゃんはいくつなの?学生だよね?」

「そうです、高校生です!」

「え、学校は?」

「学校は…っ」

あ、聞かれるままに答えちゃった。

普通に言っちゃったけど、毎日毎日変な時間にフラフラしてるってよくないよね!?

イメージ的によくないよねっ

「あのー…、えっと…」

「学校、お休み中?」

「え?」

「誰にも行けない理由がある時ってあるよね」

まっすぐ前を見てそう言った伊織先輩は笑っていたけど、どこか寂しげだった。

でも、そうだ。

伊織先輩だって。

聞いてもいいのかな?

教えてくれるかな…?

「伊織先輩は今…、何してるんですか?」

伊織先輩は私より1つ年上、今は22歳だと思う。


5年前、高校2年生だった伊織先輩は気象予報士になることが夢だった。


きっと伊織先輩ならその夢を叶えるため、大学に進学したはずー…

「僕もお休み中なんだ」

ひゅっと風が吹いた。   

伊織先輩の髪が揺れる。

長い前髪で、表情が上手く見れなかった。

「同じだね」

私の方を向いた時には、いつものように笑ってた。

だからそれ以上は聞けなかったんだ。

「あ、そうだ!連絡先!」

コートのポケットから伊織先輩がスマホを取り出した。

「あんまり人と交換したことないからわかんないんだけど、どうやって登録したらいいのかな?」

「えっ、教えてくれるんですか!」

「うん、またなっちゃんとは話したいしね」
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