タイムスリップ・キス
「晴って意外と天気に詳しいんだな、知らなかったわ」

「…山田でも知らないことあるんだ、私より私のこと詳しそうなのに」

地元の駅まで戻って、駅前のスタバまでやって来た。山田はコーヒー、私はお気に入りの抹茶クリームフラペチーノ。

5年前と変わらない味をしていた。
奥の隅っこの席、丸テーブルを向かい合わせに座る。

「そんな話出たことねぇからな」

影響されやすい私は気付いたらちょっとだけ詳しくなってたんだと思う。

気象予報士になりたいとまでは思ったことなかったけど、雪の降る条件は話せるぐらい詳しく…
 

ずっと憧れていたから。


「新しい晴を見た気がしたわ」
 
そう言って山田が一口コーヒーを飲んだ。

未来(こっち)の私は山田とはこんな話はしてないのかな、…伊織先輩との話なんか彼氏である山田に話すことでもないか。  

「でもプラネタリウムはよかったなー、ちょっと感動したわ」

「え、来てないの?未来(こっち)の私と」

「まだ来てない、なんかタイミング合わなくて」

「そうなの!?じゃあ私のが先に来たってこと?」

「そう」

そうなんだ…、へぇ。

きっといくら未来の私でも私なんだから行きたいと思ってるとは思う。

「まぁいつでも行けるし、俺は今目の前にいる晴に見せたかったから」

「………。」


ずっと憧れてた。

ずっと一緒に見たいと思ってた。


ずっと伊織先輩と、そう思ってたんだけど。


そんなこと言わないでほしい。


どうして今、嬉しいって思っちゃったんだろう。


ちゅーっとストローで吸った。
一気に口の中が甘くなる。

「過去に戻って数年したら出来てるんだけど、なんか得した気分になっただろ?」

未来(こっち)の世界に来て変わったことがたくさんあった。

これが5年の流れなんだって思った。


山田はいつからこうだったんだろう?


この5年で何があったのかな?


それとも5年前から私が気付かなかっただけで、そうだったのかな?


ずっとモブだと思ってたのに。
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