きみと繋げた雪明かり


「し、つれいします…」


ほぼ聞こえないような声でポソッと言った後、私は目の前にあった景色に驚いた。



「あなたを……もう話したくありません…!」


「わ、私もです…」



手、繋いでる…



結ばれた後なのか、かなり近い距離で手を握り見つめ合っている二人。



私は台詞だけの練習だったから言葉しか知らないのだ。



……って、いやいや。嫌な気持ちは削除しなきゃ!



手を繋いでるのは劇だからってわかっていたけれどもそれ以上に岬木くんと涼木さんの目が愛おしそうだったから、少し…


…少し、本当にこの二人が結ばれたいんじゃないかって思ってしまったなんて誰にも言いたくない。



「……って、あれ?夜宵ちゃん?」


「杉田くん…」


何でここに…って一瞬思ったけれど。そうだった、彼もキャストなんだった。


杉田くんは今は出てこないのか、隅のほうで岬木くんたちの演技を見守っている。


「どうよ、あいつの演技良くなったと思わない?夜宵ちゃん一緒に練習したんでしょ?」

「い、一応……」


もう一回岬木くんの方を見てみると、私たちと練習したとき以上に表情も仕草も台詞を自然で見とれてしまいそうだった。


家でいっぱい練習してきたのかな…
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