有り ふれた 人生

佑 未  ③


藤吾との離婚が成立した。

藤吾は、私への慰謝料と
荒砂歯科医院への迷惑料で
かなりの金額が請求された。

その上、この地には
いられない。

二人で県外にでるそうだ。

なんども、なんども
土下座をして謝る藤吾を
白々しく見ていた。

愛していたなら
他の女性を抱くわけない
大事にしていた
大切にしていた
それは······
私だけだった。

そんなとき
清家さんから謝罪をしたいと
連絡があり
どうして?と思う気持ちと
負けたくない気持ちで合うことに

私は愛車のフィアットアバルトに
身を乗せて走った。

ずっと乗れていなかった。
フィアットアバルトに乗れて
少しだけ気持ちは浮上した。

待ち合わせのカフェには、
藤吾と清家さんがいた。

私がカフェに入ると
藤吾は、慌てて
私のそばに着て
席を促した。

私の横に座る藤吾に
清家さんは、ギョッとした顔を
したが·····
「佑未先生。
本当に申し訳ありませんでした。」
と、謝罪から
立ち上がり頭を下げる彼女の
お腹は、少し膨らんでいた。

子供そろそろ良くない?
と、話もしていた。

まだ、何か清家さんは、
話していたが
私はもう良いと思い
無言で立ち上がりカフェをでた。
「藤吾さん?」
と、藤吾を呼ぶ清家さんの声が
耳についた。

車のキーを手に持つと
いきなり取られて
「送る。」
と、言われた。
「いらない。」
と、言ったが
「送る。」
と、再び
この人は、いったい何を考えて
いるのだろう。

フィアットアバルトの助手席を
開いて私を乗せて
自分は、運転席へ

エンジンをかけて走りだす。

レトロなボディのこの車が
好きで。
藤吾もすぐに気に入り
色違いを購入したが
結婚してからは、私の赤に
乗っていた。

ふと横をみると
涙を流しながら運転する
藤吾の横顔がみえた。

斜め横から見る彼の顔が
好きだった。

だが·······

藤吾は、違った。

私は、自分の涙を拭いてから
窓から外を見ていた。
移り変わる景色の中で
私は、これから
どうしょうか?と考えていた。

噂は瞬く間に広がる
ここには入れない。
父達に相談しよう。

清家さんから300万円の
精神的負担料を貰った。
多分藤吾が支払いをしたと
思うが。

二人で暮らしたマンションは
売りに出した。

マンションの売却費は、
半々とする事に決まっていた。
私は自分の荷物だけを持ち
実家に戻っていた。

藤吾は、実家の駐車場に
車を止めると
車を降りて助手席を開けて
私を下ろして
車に鍵をかけて
キーを渡した。

その時、手が触れたが
私は嫌悪感から
キーを落とした。

藤吾は、落ちたキーを
見つめてまた、泣いていた。

私は自分で、キーを拾い
「ありがとうございました。」
と、言って実家へと入っていった。
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