私と貴方の秘密の一年間

「まさか、私に見せたかったんですか? 好きな人が死ぬ姿を、悪趣味ですね」
「そんなわけないだろ、さすがに俺もビビったわ」

 準備室に掃除が終わり速攻で向かうと、先生が窓から飛び降りようとしていました。思いっきり服を掴んで引っ張ったから事なきを得たけど、もう少し遅かったらマジでニュースになっていたかもしれない。

 音楽室は三階、準備室は音楽室の隣にあるから。ここから飛び降りればさすがに死ぬ。しかも、頭から落ちそうになっていたし、確実に死ぬつもりだったじゃん。

「まったく、私を呼び出しておいて死ぬようなことはしないでください。私に止めてほしかったんなら仕方がないですが!!」
「お前、俺の行動一つ一つが自殺に繋がっているとか考えてねぇか?」
「違うんですか?」
「今回は飛び降りようとしたわけではない、窓を開けていたから、風で名簿が飛んじゃったんだよ。たまたま、外に手を伸ばした時お前が来ただけ」
「あ、そうだったんですか、それは本当にすいません」

 私の勘違いだった…………。さすがに恥ずかしいというか、申し訳ない。先生の耳元で叫んでしまったよ。耳痛めてないかな、大丈夫かな。

「ごめんなさい…………」
「別に気にしてねぇから。俺の普段の行いが招いた事態だしな、気にすんな」

 名簿をまとめながら、先生が優しく言ってくれた。
 そういえば、先生今日はマスクじゃないんだ。片方の耳にマスクをかけて、煙草を吸ってる。だから、窓を開けているのか。
 暑くて開けているわけではさすがにないか、春と言ってもまだまだ肌寒いし。

「んで、お前は何暗い顔してんの」
「…………え? 暗い顔?」
「あぁ、俺の声が聞こえないくらい何か考えてたろ。何考えてたんだ?」

 作業を続けながら、なんともないような声で聞いて来る先生。
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