私と貴方の秘密の一年間
教師と卵

複雑彼女と通常教師

 どうして、この先生はいつも危ない橋を渡って生きているのだろうか。

「先生、いい加減にしていただけませんか?」
「何がだ?」
「自殺を連想させるような事をするのは」
「お前が勝手に連想ゲームを頭の中でしているだけだろ」

 今は電車の中、ドア付近に立ちながら降りる駅を待っている。先生と一緒に下校中というこのシチュエーション、それに関してならものすごく嬉しい事なんだけど…………。

「どうして今にも飛び込みそうな位置に立っていたのですか。しかも、電車が来るギリギリまで」
「…………青空がとてもきれいだなぁって思って見惚れていただけだ」
「めっちゃ土砂降りですけどね。見てくださいよ、この窓にたたきつけられている雨粒達」

 やっぱり飛び込みしようとしていたんじゃないか、死のうとしていたんじゃないか。電車にぶつかれば人間の身体はスプラッタ映画のごとくバラバラになるというし。確実に死ぬには、これもまた方法の一つ。

「それで、誤魔化さないでください。飛び込もうとしていたんですか?」
「飛び込む気はなかったよ」
「なら、なんであんなギリギリな所に立っていたんですか?」
「…………考え事」
「その考え事が不穏なんですけど…………」

 答えようとしてくれない先生。まぁ、言いたくないのならいいんですけど、せめてその考え事だけでも教えてくれてもいいのに。
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