私と貴方の秘密の一年間
「手、止まってるけど?」
「百面相している先生が可愛くてつい見惚れてしまいました」
「正直にどーも。でも、俺はお前からは可愛いよりかっこいいって言われたいな」
「めちゃくそにかっこいいですよ、先生」
「付け足したような誉め言葉どうも」
「くっ…………」

 いや、確かに今はかっこいいより可愛いが勝っているんですけど。そんな、付けて足したような誉め言葉って。

 私の先生への想いはそんな軽いものではありませんよ?

「つーか、卵にペイントとか難しすぎるだろ。こんな楕円形になっている物に絵を描くとか」
「先生が言いだしたんじゃないんですか」
「今めちゃくそ後悔している」
「そんなぁ。私は結構楽しいですよ? ほら、これは先生の目と口です」
「なんで俺。しかも、なんでそんなに輝いてんの? 俺、目と口から星出してんじゃん」

 私にはこう見えるんだから仕方がないです。

 それにしても、意外に面白いなこれ。ただ、卵に絵を描くだけのものかと思っていたんだけど、これはなかなか。
 もっと、色んな種類を書いて、家に置いておきたい気がする。いつでも先生とのこの空間を思い出せるように。

「先生、私と先生で並べると繋がるような絵を描きまっ――――先生?」
「ん? どうした?」
「い、いえ。あの、書かないのですか?」
「お前を見ている方が面白くてな。あ、お前の言葉を借りようか、そうだな。見惚れていたとでも言おうか」
「――――――――へ?」


 ――――――――ゴトッ


 な、ななななななな!? 何を言っているんだこの教師! いや、ここは喜ぶべき場面なのか? わ、わかんない!!
< 27 / 68 >

この作品をシェア

pagetop