私と貴方の秘密の一年間

「まったく、何を考えているのですか幸大」
「いや、まさか全力で頭を殴られるなんて思わなかったからさ」
「当たり前です。焦りのあまり力の加減を間違えたのはこちらのミスですが、明らかに悪いのは幸大ですので。一度、喉に紙を沢山詰まらせて窒息死しようとしていたのは、今も忘れていませんので」
「それは今すぐ忘れて」

 ソファーに先生がうつぶせになりながら文句を繰り返してる。教頭先生は、先生から受け取った(奪い取った)健康診断の結果に目を通してる。

「…………はぁ。幸大、貴方は――――」
「ところで教頭先生」
「何ですか?」
「焦っているのはわかるけど、ここに生徒がいる事をお忘れなく」

 あ、教頭先生が私を見てきた。しかも、なんか、焦ってる。え、でもさっき私を見つけて名前を呼んでいましたよね。もしかして、先生が紙を食べた事で私の存在が完全に無くなったのでしょうか。焦り具合からしてありえますね。

「えっと、何故教頭先生は九頭霧先生を名前で呼んでいるのですか?」
「…………」
「…………」

 あれ、二人とも何も言わなくなってしまった。いや、教頭先生は冷や汗を流しているし、その様子を見て九頭霧先生は楽しんでいる、顔は無表情だけどわかる、これは本当に楽しんでる。これが、愉快犯。
< 62 / 68 >

この作品をシェア

pagetop