私と貴方の秘密の一年間
教師と教師

校長と教師

 何で教頭に呼ばれているのに、場所が校長室なんだよ。まぁ、他の人には聞かれてはならない内容だからだろうけど。今回の健康診断の結果、そんなに悪いのかねぇ。

 …………いや、本当に何かあったか? 肺はいつもだし、胃はもう死んでいるし。それは翡翠も知っているし、校長もわかっている。

 考えながら歩いていたら、すぐに校長室にたどり着いた。周りには人がいない。人除けしたなこれ、権力めちゃくそ使ってんじゃん。こういう所は昔から変わんねぇのな。

「しつれーしまーす」
「待っていましたよ、幸大」

 うわぁ、教頭が眼鏡をかけ直して俺を見てくる。これ、怒りを隠している時の仕草だ。なんで怒っているの、俺の健康診断の結果を見て怒らないでよ。

「幸大」
「はい、なんでしょうか校長先生。これ以上の減給は俺の生活が成り立ちませんのでご遠慮いただけると嬉しいのですが」
「…………今回は校長としてではなく、お前を大事に思っている人の知人として呼ばせてもらった。だから、減給などはない。安心せい」
「…………知人ねぇ…………。俺を大事に思っているとか、ふざけた事を言わないでよ、漢代《かんだい》さん。どうせ、あんたも俺を憎んでいるんでしょ? 憎まないわけがない。だって、実の娘が俺のせいで――――」
「幸大!!!」

 っ、うるさいな。何でそっちが反応するんだよ翡翠。普通は漢代さんが俺を殴ったり、罵倒したりするだろ。

 まぁ、暴言を吐かれるのには慣れてる。別に、今更何を言われてもどうでもいいいけど。

「私はお前に何かしようとは思っていない。それに、あれは事故であって、お前が責任を背負う必要もない」
「…………」

 事故、あれが、事故。
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