私と貴方の秘密の一年間
いや、でも。どうにかしてしまったら先生が先生じゃないかもしれない。顔で決めているわけではないんだけど。
「――――っ、金糸雀!!」
「え? きゃ!!」
いきなり引き寄せられっ――――
――――ブロロロロロロロ
この音、車? というか、今、先生の腕の中。あ、え、あ。
せ、先生の、腕の、中…………。
「危ないな、あの車。俺達が見えていなかったのか? ん?」
めっちゃ、顔に熱が集まっているのがわかる。だって、先生に抱きしめられているんだから。不可抗力だったとしても、これは、ご褒美。
「…………そういえば、周りに人いないね」
「――――え?」
「恋人らしい事でも、してみる?」
え、顔が近づいて来る。これって、恋人同士がやるという事は、キス!? あ、マスクを取った。口元にはいじわるそうな笑み、細められた黒い瞳に吸い込まれそうになる。
どんどん美しい顔が近づいて来て――……
――――――――ピンッ!!!
「った!!! え、なんで??」
「無防備すぎ。するわけないだろ、俺は一応教師なんだから。生徒に手を出すのはまずい」
あ、離れちゃった…………。咄嗟に目を閉じちゃったから、どんな顔をしていたのかわからない。マスクを元に戻してしまったし、髪をガシガシ掻いてる。
少しはなんか、赤くなったりしないのかな。照れてほしいんだけど。
「遅刻しても俺のせいじゃないからな」
「そこは『置いて行かれたいのか? 早く俺の隣に来いよ』とか言ってください。じゃなければ行ってあげません」
「お疲れ様。今日のお前は欠席にしておくわ」
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい!!!」
急いで先生の隣に。また手を繋ごうとしたけど、華麗に交わされました。