【受賞】幼妻は生真面目夫から愛されたい!
「す、すまない」
 慌てた様子でそう口にするクラークが、なぜか可愛らしいと思えてしまった。
「気になさらないでください」
 クラークは黙ってオリビアを見下ろしている。何か言いたそうに口を開きかけていた。
「旦那様……?」
「いや、なんでもない」
 静かに目を伏せた彼を、ただ黙って見つめることしかできなかった。
 小奇麗になったクラークと共に、食堂へと向かう。遠征先ではきっと満足な食事を取ることもできなかっただろう。
「このようなご馳走は、久しぶりだな」
 クラークは目を細めると、料理人を気遣うような言葉を口にした。
「ああ、そうだ。オリビア」
 結婚して二年。このように彼から名前を呼ばれたのは初めてである。いつも彼は、オリビアのことを「君」と呼んでいた。
「はい」
「少し、長い休みをもらうことができたんだ。君の誕生日を祝ってやれなかったし、誕生日の償いというわけでもないのだが、君さえよければ、どこか出かけないか?」
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