【重愛注意】拾われバニーガールはヤンデレ社長の最愛の秘書になりました 1

怖かったら、いつでも『やめて』と言って 【第一部・完】

 だが暑い時期、寒い時期を意識した肌着シリーズはあり、男性の下着、女性のシームレスでシンプルな下着は展開してある。

「何か、すみません」

「いや、いいよ。『長年彼女がいなかった』って言っておきながら、手慣れた感じがあったらやだもんな」

 仕事に下着が関わるのだと言われて思いだし、一緒に脳裏によぎったのは、出掛ける時に香澄のコーディネートを考えてくれた、真剣な顔だ。
 香澄にピアスホールが開いているか確認する時も、あれだけ顔を近付けたのにファッションの事で頭が一杯なようだった。

 つい、よこしまな意識で「男性がまじめに女性下着の仕事をできるのかな」なんて思ってしまったが、瞬時にしてそんな感情を覚えた自分を恥じた。

(きっと、私が思っている以上に、ファッションへのプロ意識が強いに決まってる)

 香澄がまじめに考え直した時、佑の手がキャミソールの裾から入り込んできた。

「……脱がせてもいい?」

「……はい」

(こうやって、脱がせるにもいちいち断りを入れてくれる。……健二くんは何も言わないで、むしるように服を脱がせて勝手に始めていたのに)

 つい、心の中で元彼と佑を比較してしまう。

「香澄……」

 タップパンツも脱がされ、パンティ一枚になった香澄の頭を、佑は優しく撫でてくる。

「怖かったら、いつでも『やめて』と言って」

「はい」

(優しいな……。きっと、『やめて』って言われてもやめられる、理性の強い人なんだ)

 頬を撫でられ、佑の親指が香澄の唇の輪郭を辿る。
 柔らかなそこを確かめたあと、佑はもう一度香澄の唇にキスをした。
 そして首筋、鎖骨、デコルテと、優しく吸い付いてはキスをした部分に舌を這わせる。

「ん……。ぁ、…………あ……」

 温かな舌が肌を這う感覚に、思わず甘くかすれた声が出る。

 そのあとは、生まれて初めてこの上なく優しく愛おしい愛撫に身を任せた。
 めくるめく官能の波に呑まれ、呼吸をするのももどかしくなる。

 襲いくる悦楽に恐怖を覚えても、佑は己の性欲に任せて彼女を襲う事なく、彼女のペースを守って絶頂まで導いてくれた。

 すべてが終わり、陶酔しきった香澄は目を閉じる。

 疲れ切り、体が重くて指一本動かせない。
 体はそのままシーツの海に沈んでゆくのかと思った。

 これからも佑には抱かれるだろうけれど、初めて抱かれてここまで気持ち良くなった感覚だけは、一生忘れられないと感じた。




「……気持ち良かった……」

 佑はポツンと呟き息をつく。

「香澄?」

 声を掛けて少し彼女の体を揺すったが、香澄はピクリとも動かなかった。
 耳を寄せると寝息が聞こえていて、無理をさせてしまったと反省する。

 とりあえず苦しくなったら困るので、彼女の体を仰向けておいた。
 体を拭いてあげようと思い、寝室から直接繋がっている洗面所に向かう。
 タオルをお湯で濡らして絞り、汗で濡れた肌を丁寧に拭いていく。

 香澄が気にしていたように、佑にも元カノはいた。
 けれどこうやって事後に体を拭いてあげるのは初めてだ。
 そもそも、その前にここまでがっついてセックスをした事がなかった。

(それを伝えられたらいいんだけど、また別の機会になるのかな)

 深く眠っている香澄は、そう簡単に起きなさそうだ。
 秘部も綺麗に拭いたあと、起きていたら嫌がるだろうなと思いつつ、内心謝って下着をはかせた。
 そのあと自分も下肢を軽く拭き、下着をはく。

 香澄の隣に寝転んで照明を落とし、静かに彼女の香りを吸い込んだ。

「ありがとう」

 彼女の耳元で囁き、佑は下腹部の疼きを必死に抑える。

「……腰が溶けそうだった」

 たっぷり濡れた場所の締まりがあまりに良く、初めてセックスを知った少年のように我を忘れてしまった。

「自戒しないと」

 呟いたあと、佑は自分も眠る事にした。





 香澄を迎えた正月休みは終わろうとし、明日から佑は出社だ。

 明日の朝松井が迎えにきた時に例の資料を渡してもらい、彼女が仕事を始めても大丈夫な頃合いになったら、出社してもらうつもりだ。

「これから宜しく。香澄」

 佑は彼女に囁き、その頬にキスをした。



 第一部・完
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