夏の音を聴かせて
あの日、夏の海で貴方と最後にしたのは、線香花火だった。

まるで、夜空に散りばめられた星々が、堕ちてきたかのように、小さな光りを放ちながら、心に貴方という(あかり)(とも)り永遠の光となる。

私は、抱きしめられた身体をそのままに、貴方の背中をぎゅっと握りしめた。

夏音(なつね)、愛してた」

私が、ずっと欲しかった言葉は、寄せては返す波の音と共に、貴方の声と共に攫われていく。

来斗(らいと)……ありがとう」

きちんと、さよならを言えない私は、さよならの代わりにそう言葉を吐いた。

貴方は、何も言わない。
私も、何も言えない。

藍色の空に輝く星々の小さな輝きが、涙で歪んで滲んでいく。貴方への思いが瞳から溢れて、無数の水玉が、砂浜を埋め尽くしていく。

「もう来世は、会わないから……」

震えた唇から吐き出した言葉は、貴方にちゃんと届いただろうか。

もう二度と、貴方に恋をしないように。
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