断る――――前にもそう言ったはずだ
「モニカ」


 エルネストがモニカのベールをゆっくりと上げる。
 緊張と興奮で、頭と身体がおかしくなりそうだった。


 エルネストの美しい顔が、瞳が、唇が近づいてくる。
 ずっと見ていたくて。
 とてもじゃないが見ていられなくて。
 モニカは思わず目を瞑る。

 すると、柔らかな感触が唇を覆った。

 ほんの数秒間のはずなのに、ひどく長く感じられる。
 いつ終わるか分からなくて、チラリと目を開ければ、エルネストの瞳と視線がかち合った。


 勘違いかもしれない。
 けれど、いつも氷のように冷たいエルネストの紫色の瞳が、今日は熱を、愛情を孕んでいるように見える。


(ほんの少しでもいい。こんなわたくしでも、エルネスト様は愛情を抱いてくれるかしら?)


 湧き上がる拍手喝采。
 モニカはハッと我に返る。

 隣を見れば、エルネストは参列者に向かって満面の笑みを浮かべていて。

 嬉しいような、悲しいような。
 何とも言えない気持ちになった。
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