断る――――前にもそう言ったはずだ
 外の風に当たると、鬱々とした気分が幾分マシになっていく。


(ヴィクトルたちの言う通り、外に出てみて良かった)


 モニカがそんな風に思ったその時だった。

 進行方向の少し先で、筆頭侍女であるジュリーとコゼットが声を潜めて会話をしている。


「――――貴女、他の侍女に話していないでしょうね?」

(ん?)


 二人揃って深刻な表情。ついつい内容が気になって、モニカは足を止めてしまう。


「はい、話しておりません。けれど私、どうしたら良いか分からなくて……」

「けれど、じゃないわ。今後は絶対に公言しないで。もしも妃殿下のお耳に入ったら――――」

「わたくしがどうかしたの?」


 気づかなかったふりをすべきか迷いつつ、モニカは二人に声をかける。ジュリーは真っ青な表情で飛び上がりつつ、モニカに向かって頭を下げた。


 一方のコゼットは「あっ!」と小さく声を上げ、それから瞳を震わせる。彼女は見るからに困惑した様子で、モニカの元へと駆け寄った。


「妃殿下……! 私、どうしたら良いのでしょう? どうしたら……」

「口を慎みなさい、コゼット。妃殿下のお心を煩わせることは許しません」


 ジュリーはモニカとコゼットの間に入り、厳しい口調で制止する。


「けれどジュリー」

「妃殿下、気になるかもしれませんが、どうかこの場は私にお任せください。コゼットには私からきっちりと助言と指導をしておきますので」

「…………そう? それじゃあ任せるわ」


 気にならないと言ったら嘘になる。
 けれど、筆頭侍女のあまりの剣幕に、モニカは思わず頷いた。

 背後からコゼットの視線を感じる。
 モニカの胸に大きなわだかまりが残った。



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