断る――――前にもそう言ったはずだ
「お待ちしておりました、エルネスト殿下」


 ベッドに腰掛け、女性が微笑む。
 肌を大きく露出したネグリジェ、甘ったるい香水の香り。艶やかに濡れた瞳がエルネストを見つめる。
 あまりにも思いがけない出来事に、エルネストは大きく目を見開いた。


「誰だ、お前は。一体誰の許可を得てこの部屋に入った?」

「嫌ですわ、殿下。私はコゼット。カステルノー伯爵の娘でございます。殿下も当然ご存知でしょう?」

「カステルノーの?」


 当然伯爵のことは知っている。
 昨日もモニカとの話題に上がったぐらいだ。

 けれど、エルネスト自身は伯爵にも、その娘にも、全くもって興味がない。
 最近では側妃云々の話のせいで、彼の排除対象になりつつあった。


「それで? カステルノーの娘が、どうしてこの部屋にいるんだ?」

「まぁ……野暮ですわね。そんなこと、見ればお分かりになるでしょう?」


 コゼットは頬を染めつつ、エルネストの元へと擦り寄っていく。彼は嫌悪感をあらわにし、数歩後ずさりをした。


「愚かな。僕が側妃を求めていないと、父親から聞いていないのか?」

「もちろん聞いておりますわ。
けれど、私にはその理由が分かりません。だって、殿下は正妃であるモニカ様をあんなにも嫌っていらっしゃるんですもの。いつまで経っても子もできませんし、執着する理由なんて一つもないでしょう?」

「…………は?」


 その瞬間、エルネストは驚愕に目を見開く。


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