断る――――前にもそう言ったはずだ
(モニカが……そんな、まさか!)


 ありえない。
 そんなこと、絶対、あるわけがない。


 急いで寝室を飛び出そうとするエルネストを、コゼットが抱きつき、引き止める。


「お待ち下さい、エルネスト殿下。不貞を犯すような妻、嫌でしょう? 要らないでしょう? ですから、私を貴方の妃に――――」

「モニカはそんなことをする女性ではない!」


 エルネストはきっぱりと断言をし、寝室の前に配置された護衛騎士にコゼットを引き渡した。


『だって、今も御自身の寝室に、男性を連れ込んでいらっしゃるぐらいですし……』


 ありえない。
 貞淑なモニカがそんなことをする筈がない。

 そもそも、コゼットがそれを知っている事自体がおかしいのだ。
 不安と焦燥感がエルネストの胸を強く焼く。


「モニカ……!」


 エルネストはモニカの私室へと急いだ。
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