断る――――前にもそう言ったはずだ
「まさか、このようなことをしでかすとは……」


 エルネストの父親、国王陛下が盛大なため息を吐く。


 手口は大胆にして稚拙。
 けれど、仮に成功していれば、彼らの目論見通り、モニカは全てを失っていただろう。

 とはいえ、陰謀とは実に紙一重なもの。
 彼らは今、手に入れたかった未来と引き換えに、全てを失おうとしているのだが。
 

「カステルノーよ、お前は何故、こんなことを?」


 分かりきったことではあるが、動機はハッキリとさせなければならない。
 モニカの父親である宰相が、彼らに向かって尋ねる。

 カステルノー伯爵はカッと目を見開き、己の政敵を睨みつけた。


「知れたことを!
お前のせいで……! お前たち父娘のせいで、私は全てを失った!
本当ならば我が娘が――――コゼットが正妃になる筈だったのに!
それだけじゃない! 宰相の地位もそうだ! 私のものになる筈だった!
それなのにお前は『地位にも名誉にも興味ありません』という顔をして、何も知らずに笑っている! 私は奪われたものを奪い返そうとしただけだ! ただそれだけだ!」


 怒りと興奮で真っ赤に染まった顔。あまりの剣幕に、モニカは思わず震えてしまう。


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