これは夢なんかじゃない！

プロローグ


　目を開くと、お城の美しい庭園に居た。
　ここは何処？
　目の前には扉があり、扉を開くとそこは1面綺麗な花畑だった。
　懐かしさと共に、なぜだか寂しさを感じる。
　花畑からは街も見え、美しい建造物を眺める。
　
　「××様、」
　私の名前を呼ばれ、後ろを振り向くと、そこには騎士が1人立っていた。
　顔はしっかりと見えない。でも、微笑んでいるのは分かる。私はこの笑顔が大好きだったということも。
　
　目を閉じ、もう一度目を開くと、同じ人が悔しそうな表情を浮かべ立っていた。
　この人は誰なのだろう。何も分からない。
　何故泣いているの？
　そう聞きたくても声が出ない。
　泣かないで欲しい。あの笑顔をもう一度見せて欲しい。
　
　大きく深呼吸をしもう一度目を閉じる。
　目を開けると街は見る影も無くなっていた。
　人々の苦しみ、泣き叫ぶ声。大量の血の匂い。
　私は彼を探して走り回った。

　最後にたどり着いた花畑。きっと彼はここにいる。そう思い扉を開けると、血まみれになった彼が横たわっていた。
　すぐさま近寄り、声をかけようとするも、声が出ない。
　彼は死ぬ最後の力を振り絞って何かを私に伝えようとしているがそれも聞こえない。
　遠いところから、無機質な電子音が聞こえる。

　あぁ、これは夢だった。そう思い出す。
　そして彼が息絶え、私は彼の剣を抜き、喉を貫き死ぬ。ここで目が覚める。いつもの事だ。

　…そう思っていた。
　喉を貫き、意識が遠のく中、なぜだか彼の声が聞こえた。
　「もしも生まれ変わったら、必ず貴方を守り抜いてみせます。そして、許されるのであれば、」



　「私と結婚してください。」