※エリート上司が溺愛する〈架空の〉妻は私です。
7.『好き』の意味を教えて


「よし、できた!!」

 ネットで購入した片岡の牧場のミルクジェラートが届くと紗良は早速念願の紅茶フロートを作った。
 濃いめに淹れたアールグレイにミルクジェラートを浮かべ、ブルーベリーとミントの葉を添えたら完成だ。出来上がった一品を上下左右から眺めまわす。

(うんうん、なかなかいいんじゃない?見た目は完璧。さて、味はどうかな?)

 スプーンでジェラートと紅茶を一緒にすくい口に運んでみる。あまりの美味しさにバタバタと足を踏み鳴らしてしまった。口溶けは滑らか、濃い目のアールグレイとの相性も最高。

(さっすが、私っ!!)

 目論み通りの出来に満足し、紗良は自画自賛した。
 本当ならこの喜びを静流と分かち合いたいところだけど、今夜は専務と会う約束があるから帰りは遅くなると言っていた。
 おそらく今後どうするのか話し合いの場を設けているのだと思う。
 
(私ってばすっかり忘れちゃって……)

 片岡を探すことにばかり気を取られ、自分が社内で置かれている状況をすっかり忘れていたことには恥じ入るばかりだ。結果として静流のトラウマは払拭できたが、肝心の不倫疑惑はまだ消えていない。
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