※エリート上司が溺愛する〈架空の〉妻は私です。
4.落ちたら怖い恋の沼?

「ほのか!!こっち~!!」

 紗良はカフェの入口であちこちと視線を彷徨わせていたほのかに向かって手を振りあげた。ほのかは紗良を見つけると顔を綻ばせながら歩み寄ってきた。
 ほのかと待ち合わせしたのは『ナナテラス』というグリーンカフェだ。店内にある観葉植物に加え、天井のファン、籐や麻を使ったブラウン調のインテリアはちょっとした南国リゾートのような雰囲気を醸し出している。二人の家のちょうど中間にあることもあって、ほのかと待ち合わせはいつもここだ。
 
「久し振り、元気にしてた?」
「もちろん!!」

 ほのかはコートを脱ぎハンガーに掛けると、お冷を持ってきた店員にコーヒーとチーズケーキを注文した。注文の品がテーブルに届きひと心地ついたところで、紗良はバッグの中から紙袋を取り出した。

「ほら、これ。頼まれていた例の物」
「ありがとう~!!そろそろ紗良のお茶が恋しかったんだよね」

 ほのかは紙袋の中身を改めると、嬉しそうに頬ずりした。
 紗良は紅茶の勉強のために毎月何種類もの茶葉を新しく購入している。しかし、すべてを自分で飲み切るのは不可能である。   
 茶葉はなまものだ。湿気にも弱く一度開封するとどんどん鮮度が落ちるし、適切に保管しておかないと飲み終わる前にカビてしまう。
 そこで紗良は自分が買った茶葉をティーバッグに詰めなおし、知り合いに無償で提供しているのだ。

「あ、そうそう。お茶のお礼と言ってはあれだけどちょっと早いクリスマスプレゼント。私とお揃いっ!!」

 紗良はほのかに渡されたプレゼントボックスの包みを開けると歓声を上げた。
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