約束された血の匂い

その9

約束された血の匂い/その9
麻衣



どひゃ~、真樹子さん

ちょっと待ってよ…

いくらアテ物といえ、あんなポマード野郎ってさ…


...


「そりゃ、真樹子さんの組み立てには文句なしよ。久美のこと、そこまで考えてくれて、ありがたいと思ってる。でもねえ、いくら何でも浅土道也って、私的にはありえないわ」

「麻衣さんがそう言ってくるってのは、当然承知よ。でもね、今日久美に会って感じたわ。間をおいたら、あの子、持ってかれるわ。クソ男にまた戻っちゃう。南玉でも肩身狭い思いしてるようで、しょぼんとしちゃってるし…」

まあ、南玉の連中は出戻りめって、冷たい視線浴びせるわな

そりゃ立場悪いよ、いくらノー天気な久美でもさ

「いま、優しく囁かれたらあの子、いちころよ。だからさ、中途半端なのを充てたら、寂しさのあまり勢いでデキちゃうかもしれないわよ。その点、道也なら、あくまでアリバイつくりの相手ってことで割り切れるでしょうから」

うーん、そういうことはあるだろう

さすがの久美だって、あのポマードのチビなんかにポーッとなることはないか…


...



「わかりましたよ、真樹子さん。それでいこう。私の読みじゃ、近々、偶然装って久美に会うよ、アツシは。道也とは至急、セッティングをお願い…」

「了解よ。ああ、それで、そのアツシとかっての、そろそろなんでしょう?」

「そうね、もう近いわね。ほぼ材料は整ったから、倉橋さんとも詰めてるわ」

「そう…、なんか、凄いことになりそうね。今回は私たちの世界でのスジを超えてるから…」

その通りよ

アツシは相和会の正式組員として、”過ち”を犯した

それは愚か極まりないもので、この世界に生きる人間としては、決して許されないことだ

もっとも、あのクソには、約束された運命だったとも言える

そして誘ったというか、仕掛けたのが倉橋さんと私

そう言うことになる


...



あの男には、私たちを駆り立てる理由が、十分なほど備わっていた

私たちを監禁して暴行した際、ビジネスではなく、欲望にまかせて女子高校生を犯した

いい思いをして、”若さん”を守れなかった責任は他の人間に背負わせ、自分は無傷ですり抜けた

あくまで組の人間ではなく、若こと、相馬定男の”友人”だからと…

だが、その後、相和会の正式となって、倉橋さんの下に就いた

ふふ、哀れなほどバカね、西城アツシって男は

アイツ、久美より足んないわ、アタマの中のモン




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