空色のオレと海色のキミ

after story:おかえり、海


「ただいま」
「「「「おかえり」」」」

空の‘ただいま’に応える4つの‘おかえり’は、母と二人で暮らしていた私にはなかったものだ。

でも小学生の間は、空と一緒によくここへ帰って来た。そして空のおばあちゃんがいつもこの家にはいたんだ。

「海ちゃん、よく帰ってきたね。おかえり」
「…おばあちゃん…ただいま」
「私たちは高校の卒業式以来よ…ねぇ、お父さん」
「そうだね。ちょうど10年か…おかえり、海ちゃん」
「おかえり、海ちゃん。上がって、上がって」
「ありがとう。ただいま…」
「おいっ、おかえりはいいけど、誰か手伝えよ。ったく…揚げ物放って危ないだろうが…皆で玄関に行ったら俺が行けないだろ?」
「あ…陸、ごめん、ごめん。でもあんたは先に海ちゃんと会ったからいいでしょ」

姿の見えない陸くんは台所で揚げ物を揚げているらしい。

「海ちゃん、ご飯食べて行って」

おばあちゃんは私と手を繋ぐと少し左足を庇うようにゆっくりと歩く。

「おばあちゃん、足痛い?私に掴まっていいよ」
「膝が最近痛いだけで元気なんだけどね。たまに背中が痛かったり、年だからしょうがないね」
< 30 / 38 >

この作品をシェア

pagetop