ツナミの女/80S青春群像『ヒートフルーツ』豪女外伝/津波祥子バージョン編【完結】
その5
麻衣


「…いいですか?浅土君には言ってありますけど、飲み物とかは毒が盛られてないかのチェックを怠りなく。…なにしろ、常に臨戦態勢ですよ」

「はい…」

なんか、泊りがけの旅行に出かける前の親みたいだな、ミカさん(苦笑)


...



「それと…、剣崎親分から私の過去、聞いたそうですが、それは文字通り過去ですから。忘れて下さい」

「…私って、昔から一度聞いたら忘れることはできないんですよね。その上で、ミカさんとはこんな形で出会えたこと、すごくよかったと思えるんです」

「…」

「…このヒリヒリする感覚、あなたと一緒に共有できてることで、なんか私、どこか変えられたかなって気がするんですよね」

「そうですか…。私もあなたと接して、何か変わったかも…。ううん、確実に変わった…」

「たとえばどんなとこが?…とか、聞いちゃっていいですかね(笑)」

「…人としての幸せ、生と死、愛と死。これは私が今まで、ずっと向き合ったきたことへの姿勢かな。常に目の前にあったから。それで生きてきた。あなたと近しくなって、これらが明らかに変わって見えてきたわ」

「ミカさん…、それって…」

「…相馬さんに漠然と感じてたもの、そのあと、倉橋さんになんとなく求めていたもの…。それね、きっと」

私はそれ、死生観なのかって確認しようと思ったがやめた

「ミカさんもイカレ者の輪に入ってきたのかな…。はは…」

「ふふ…、イカレてるのは世間の方よ。あなたの言うイカレた感覚は人間がマトモじゃないと、持ち得ない。そう思えるわ」

「…」

マトモか…


...


剣崎さんからの昨夜の電話で、相和会としての具体的な方針が確定したことを聞いた

間宮康と土橋タクヤ、それに西城アツシ…

要はこいつらに対しての対処が決まって、故にその運命も定まったということだよ

私は逃げずに最後まで向き合ってやる

こやつらへは私が能動的に誘導してきた経緯ははっきりしてるし

別に、私は相和会の歯車じゃないつもりだが、周りはそう見るだろう

それからも逃げずにだ、肝心なのは



...



土橋タクヤとは中央公園で会い、ただ今、お話し中だ

「へー、アキラに会ったのか、アンタ」

「ええ、まあ…。あの…、俺もう、あんた達とは切れたいんだ。もういいだろう、俺はバンドでやって行きたいだけなんだって」

コイツ、アキラにバンドの口を頼んだらしいや

テメーは、アキラのプロデビューを閉ざしたくせに


...



「あのね、今のアンタ、泥沼だよ。やの字がバックのクソ連中と節操もなく接して、バカだねー。奴ら、根無し草のチンピラなんだ。約束なんて破る為にあると思ってるって。ヤバいわ…、両方からいいように毟られてちょんだわ。さあ、どうするか…」

「ちょっと…‼元はと言えばオタクがきっかけなんだよ!何とかしてもらわないと…。俺も、あいつらがどんなルートなのかはさっぱりわからなくて、そっちの関係かと思ってたから…。ああ、どうすればいいんだ、俺…」

「タクヤ!テメー、まずはシャキッとしろ‼」

バシーン!

私はタクヤの胸ぐらを両手でつかんで、一喝した後、思いっきりビンタをかました

「うっ…、うっ…」

「私の目を見な、タクヤ!」

「うっ…」

コイツ、ベソかいてんじゃん…


...



「あのよう…、まあ、私もアンタには、ちょっとやり過ぎだったと反省はしてるんだ。だから、私にできる範囲はやろうと思う。今更ながらだが…。まず、私の今の”身分”、クソチンピラどもから聞いてるな?」

「ああ…、確か相和会の幹部と結婚するとか…」

「そう…。ただ、相和会の組員ってことにはならないわ、私はね。でも、組内部の関係者ってことではある。へへ…、そこでよ、今の私ならいろいろできることあんのよ、そうなるとさ。あんた、とりあえず、私の手のひらに乗っかれる覚悟はあるか?」

「あの、意味がよくわからないけど…」

「平たく言えば、すべて私の言うとおり動けるかどうかってこと。それで、今アンタに付きまとってるクソ連中は離してあげる。今言った、私のイレギュラーポジションを生かせば可能なのよ、ふふふ…。それと、バンドに入ることもさ、私が出来ることは限られるけど、良しなに動くつもりよ。どう…、そういうことで、アンタの覚悟は?」

「わかった。それで頼むよ。全部任せるから…。それで俺、一体何をすれば…」

よし…、これでストック完了だ

剣崎さんには即連絡とって、私からもプレゼンする…





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