君の見ていた空
 きっと、表の奴等はこの少年の本質を捉えきれなかったのだろう。

 もし、俺なら、この少年を上手く利用しようとするなら、まずは少年の姉と姉の世界を守る事を第一にする。
 そこで、少年の信頼を勝ち取り、様々な事をやらせるだろう。

 この少年は、普通の人間ではない。特別な人間だろう。生まれながらにして、物凄い物を持っていて、それを磨き続けて今があるのだろう。
 普通の人間の物差しで物事を見てはいけない。
 特別な人間には、特別に大切にしている物がある。その特別を守ってやれば、特別な人間は普通の人間の何倍も扱いが簡単だ。

 この少年の場合、姉である。
 多分、この少年は少年なりに姉を大切にしていたのだが、周りの人間には姉を大切にしているとは思われていなかったのかもしれない。
 もしくは、大切にしてはいるのだろうが、それ程優先順位が高くないと思っていたのかもしれない。

 俺は、少年の手伝いをする事に決めた。
 少年の持ってきた情報と薬品があれば俺はこの世界でもっと地位が上がるし、この少年の事故の相手は俺並の奴でないと相手にはならないであろう。

 俺は、裏の世界の五本指の内の1つ、獄門組の若頭をしている、鬼ヶ城龍道(おにがさきりゅうじ)である。獄門組と言う名前からしてヤバそうなヤクザの組の組長の息子として生まれ、人間の死体や拷問などが自宅にゴロゴロ転がっているような環境でスクスクと成長した。まだ25歳でこんな環境ではあるが、そこそこ有名な大学&大学院を卒業して、インテリヤクザをやらせてもらっちゃっている。
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