殿下が恋をしたいと言うのでさせてみる事にしました。婚約者候補からは外れますね

 今日はカテリーナのクラスで調理実習があったらしく、クッキーを作ったようだ。可愛らしくラッピングした小さな袋を手に持っている。


 近くに寄れないから、仕方なく双眼鏡で見る事にした……

 クラスメイトと笑い合うカテリーナの可憐な事よ……そのクッキーを私にも分けてくれ。一体誰に渡す……義弟(ブラッド)かい!

 双眼鏡を持つ手が怒りに震えた……

「またあいつか!」


「殿下ともあろうお方が、何をなさっておいでですの? バードウォッチングという訳ではなさそうですわね……」

 同情するような目つきのマドレーヌに声を掛けられた……


「……美しく可憐な鳥がだな……美しいその声で私の名前を呼んでほしいと思ってだな」

 しどろもどろに説明する。

「成程……殿下はカテリーナ様に名前を呼んで欲しい……と」

 うふふと笑い声を漏らす。


 がくりと肩の力が落ち、観念したかのように身を小さくさせる。
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