隠された王女~王太子の溺愛と騎士からの執愛~
 何がそうさせているのか。騎士服の前の留め具を掛けながら、悶々と考えていたアルベティーナは小さく息を吐いた。
(そうか……。私、団長に会うのが恥ずかしいんだ……)
 動かしていた手をふと止める。自覚してしまうと、顔中に熱が溜まってくるような感じがした。今思い出しても、恥ずかしい姿を見られてしまった自覚はある。むしろ痴態だ。それでもあのときはルドルフに助けてもらいたかった。誰でも良かったわけではない。
「うわぁ……」
 アルベティーナは顔を両手で覆って、思わずその場にしゃがみ込む。
(どうしよう、どうしよう……。どんな顔して団長と会えばいいのかしら……)
 一度意識してしまうと、頭からその考えが離れてくれない。むしろ、それに支配されてしまう。
 だが、今日は任務だ。両手でペシペシと頬を叩いて気合を入れて立ち上がった。
「おはようございます」
 食堂に向かうとすでに二人の兄たちが食事をしているところだった。
「おはよう」
 エルッキが爽やかな笑顔が、アルベティーナの心を落ち着けてくれた。
「おはよう、ティーナ。身体の方はもう大丈夫なのか?」
 身体を気遣ってくれるのはセヴェリだ。
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