先生とふたり、日曜日はオムライスを。【シナリオ】
第2話



 ○学校・調理実習室

春乃「……唯奈、それ砂糖の分量違うと思うんだけど」

唯奈「……え、あっ」


 唯奈と春乃の前には里芋がグチャーっと崩れた野菜の煮物がある。

 唯奈は春乃に手を合わせてごめん!と謝る。

春乃「まぁ、味はだし汁で整ったし……大丈夫だよ」


 唯奈はシュンと落ち込む。


春乃「でも、料理が大好きな唯奈が調理実習でぼーっとしてるなんて珍しいね」

唯奈「あはははは……」


 唯奈は、昨夜、料理教室にやってきた深谷を思い出す。


《ーー深谷萊希先生。この学校の普通科・情報処理を担当している。》

《普通科の先生なので関わりはないのだが、イケメンだということで有名だ。教え方は上手だし、優しいし、スポーツ大会の先生の部では大活躍をしたし、大人の色気が半端ない。ハイスペックな先生なのだ。》


春乃「……おーい! 唯奈、本当に大丈夫なの?」

唯奈「うん。大丈夫、ありがとう」


 食べていると、
 実習室の外でキャーキャーと黄色の声が聞こえる。


唯奈「……なんだろうね?」

春乃「深谷先生でしょ、どうせ」


 唯奈は、深谷の名前に思わず動揺する。


春乃「本当なにやってんだか、学校にイケメン拝みに来てんのかね」


 春乃と作ったものを配膳すると、なんとか形のある里芋たちを手前に出して上手く誤魔化していて綺麗な盛り付けになった。
 先生に指摘されてヒヤヒヤしたけど、なんとか合格点をいただいて箸を持って手を合わせて食べ始める。



 ○料理教室・調理室(夕方)


 学校から帰ってきて、荷物を置きに行き教室用のブラウスと黒パンに着替えて髪を一つに纏め教室に移動。

 今日のクラスで作るのは、煮込みハンバーグ。唯奈は、母が作った見本の料理を写真に撮ってSNSに投稿した。


茜「唯奈、見本用のみじん切りしてもらっていい? 玉ねぎと、にんじん」

唯奈「了解! あ、玉ねぎって飴色にする分も余分にだよね?」

茜「そうそう! 玉ねぎは、生の切った状態のと、茜色用の2種類お願い! にんじんも見本のをよろしく」


 母・茜に言われて唯奈は、玉ねぎを手に取り慣れた手つきでみじん切りをする。それをグラムで計り、器に分けて置く。それと同様に人参もみじん切りにして器に入れた。


唯奈「お母さん、出来たけど玉ねぎ炒めるまでやる?」

茜「あー……お願いします。もし出来たら、パン粉に牛乳浸しといて欲しいな」

唯奈「わかったよ、じゃあ浸した状態のと浸す前の状態のを準備しとく」

茜「助かる! ありがとう!」


茜は、手を合わせて感謝ポーズをすると調理室を出て行った。
 時間は18時になり、生徒さんがやってくる時間になる。唯奈が準備を進めていると「こんにちはー」と生徒の声が聞こえて来た。


生徒1「唯奈ちゃん、こんにちは。今日もよろしくお願いします」

唯奈「はい! よろしくお願いします! 私はカメラ係ですけどね!」

生徒1「カメラ係でも、いつもフォローしてくれるじゃん。本当、若いのに偉いよね〜」


 生徒は、唯奈と会話を切り上げるとロッカールームに入った。
 唯奈は、茜に全て準備ができたことを伝えると今日から新しく来る生徒さんの案内係を頼まれる。


茜「深谷さん、先生してるんだって〜。しかも、唯奈と同じ学校だよ。こんな偶然滅多にないわよね」

唯奈「お母さん、深谷さんに私があの学校の生徒だって言わないでね! きっと、遠目の教室を選んだんじゃないかなって思うんだよね」

茜「なるほど。そうね、プライベートなことだしね」


 茜は、深谷に渡す予定のテキストに日程表を挟んだものと新品の袋に入ったエプロンを小さなトートバッグに入れて唯奈に渡した。

 すぐに深谷はやって来て唯奈は、調理室を案内すると更衣室に案内してロッカールームに入る。


唯奈「こちらがロッカールームになります。貴重品などを入れて置く部屋で、着替えもできるようになってます。今から着替えしますか?」

深谷「あ、はい。します」

唯奈「分かりました。では、私はここで待っていますのでゆっくり着替えて来てください。エプロンをついでにして、テキスト類も持参してくださいね」


唯奈が言えば「ありがとうございます」と深谷は言ってロッカールームに入って行った。


 ○調理室


茜「ーーでは、飴色になった玉ねぎがこちら。これは冷めているのでひき肉が入ったボールに入れて、にんじんなどの調味料も入れていきます」


茜が説明しながらも作業をして、最後の盛り付けまで終わると生徒も取り掛かる。

 唯奈は写真を撮りながら各テーブルを回っていると声をかけられる。

深谷「……あ、あのっ!」

唯奈「どうかしました?」

深谷「焦げちゃいました……なのに生焼けに、なってて、上手く焼けません」


深谷は子犬のような表情を見せ、唯奈に助けを求めた。






 
< 3 / 3 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:0

この作品の感想を3つまで選択できます。

この作家の他の作品

スパダリ煎茶家は、かりそめ令嬢を溺愛包囲して娶りたい。

総文字数/31,894

恋愛(純愛)97ページ

第1回ベリーズ文庫デビュー応援コンテストエントリー中
表紙を見る
表紙を見る
【改稿版】明日はキミのために泣きたくない。

総文字数/59,643

恋愛(純愛)87ページ

表紙を見る

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品をシェア

pagetop